技術コラム
制御盤の規格とは?JIS・JEM・UL508Aから板金の構造・寸法・色彩規格まで専門的に解説
1. 制御盤に関わる規格の全体像
制御盤の規格は、大きく「法規(守る義務のある法律・省令)」と「工業規格(設計・製作の拠り所となる標準)」に分けられます。工業規格はさらに、国内規格(JIS・JEM・JEC)と海外規格(UL・IEC・NEMA)に分かれます。まず全体像を把握しておくことが、仕様書を正しく読み解く第一歩です。
| 区分 | 略称 | 制定団体・内容 | |
| 法規 | 電技/解釈 | 電気事業法に基づく「電気設備に関する技術基準を定める省令」および解釈 | |
| 法規 | 労働安全衛生法・消防法・建築基準法 | 感電防止、非常用電源設備、建築設備としての要求など | |
| 工業規格(国内) | JIS | 日本産業規格。材料・試験・保護等級(IPコード=JIS C 0920)など | |
| 工業規格(国内) | JEM | 日本電機工業会規格。盤の構造・寸法・色彩・銘板・接地など盤固有の規格が集中 | |
| 工業規格(国内) | JEC | 電気学会電気規格調査会標準規格。試験電圧・絶縁など | |
| 技術資料(国内) | JEAC/内線規程 | 電気技術規程。屋内配線・接地などの実務基準 | |
| 海外規格 | UL508A / NFPA79 | 北米向け産業用制御盤・産業機械の電気規格 | |
| 海外規格 | IEC / EN | 国際規格・欧州規格。CEマーキングの基礎 | |
ポイント:盤に収める機器(ブレーカー・PLC等)は各機器の規格に従いますが、“盤という箱そのもの”の構造・寸法・仕上げを規定しているのは主にJEM規格群です。板金製作の観点では、このJEMを押さえることが最も重要になります。
2. 盤の構造・製作に直結するJEM規格
JEM(日本電機工業会規格)には、配電盤・制御盤に関する規格が体系的に整備されています。盤を設計・製作する側が特に関わりの深い代表的なものを整理します。
| 規格番号 | 名称 | 主な内容 |
| JEM 1459 | 配電盤・制御盤の構造及び寸法 | 自立形・壁掛形などの構造区分、標準寸法、鋼板厚さの目安 |
| JEM 1460 | 配電盤・制御盤の定格及び試験 | 定格や試験方法の標準 |
| JEM 1267 | 配電盤・制御盤の保護構造の種別 | 盤の保護構造(防塵・防水等)の分類・試験方法 |
| JEM 1135 | 配電盤・制御盤及びその取付器具の色彩 | 標準色(マンセル値)・光沢度の規定 |
| JEM 1172 | 配電盤・制御盤取付銘板 | 銘板の寸法・材質・取付方法 |
| JEM 1134 | 相・極性による器具・導体の配置及び色別 | 相色・極性の配置と色分け |
| JEM 1323 | 配電盤・制御盤の接地 | 盤の接地に関する規定 |
| JEM 1265 / 1425 | 低圧/金属閉鎖形スイッチギヤ及びコントロールギヤ | 閉鎖形盤の要求(1425は高圧域も対象) |
| JEM 1268 / 1404 | 図面の種類/展開接続図の様式 | 盤の図面表現の標準 |
| JEM-TR 144 | 配電盤・制御盤の耐震設計指針 | 耐震設計の技術資料 |
補足:JEM規格の本文PDFは日本電機工業会(JEMA)の会員向け提供または刊行物販売で入手します。実務では、発注元の仕様書が「JEM 1459による」などと個別に指定してくる形が一般的です。
3. 構造・寸法・板厚に関わる規格(JEM 1459)
盤の外形を作る板金製作にとって最も直接的なのがJEM 1459です。盤の構造区分、標準寸法、そして使用する鋼板の厚さの目安などが規定されています。
3-1. 構造区分
設置方法により、自立形(垂直自立形)、壁掛形、埋込形などに区分されます。近年は、天面に扉・カバーを備えて床置きする平置き形なども実務上増えており、関連規格(キャビネット工業会規格CA100など)でも追加・整理が進んでいます。
3-2. 鋼板厚さの考え方
盤に用いる鋼板の厚さは、盤の種類・大きさ・設置形態に応じて標準的な下限が示されます。自立形の骨組みや大型盤の扉・側板には厚めの鋼板、小型の壁掛盤や操作盤には薄めの鋼板が用いられます。実務では、規格上の下限を満たしつつ、リブ・曲げ・補強によって板厚を抑えながら必要剛性を確保する設計が行われます。
| 板金設計の勘所:規格が定めるのはあくまで“下限の目安”です。同じ等級・寸法でも、曲げ加工による立体的な剛性づけや補強リブの入れ方次第で、板厚を上げずに歪みやたわみを抑えられます。ここが規格を満たしつつコストと品質を両立させる板金製作のノウハウです。 |
4. 保護構造・保護等級に関わる規格
盤がどこまで異物・水の侵入を防ぐかは、盤の設置環境に対する適合性を左右する重要な規格項目です。
JIS C 0920(IPコード):外郭による保護等級を第一特性数字(防塵)・第二特性数字(防水)で表す国際整合規格。屋外盤・防水盤の仕様で必須。
JEM 1267:配電盤・制御盤の保護構造の種別を分類し、試験方法を定めた規格。盤の設計・試験の拠り所となる。
屋外・粉塵・洗浄環境などでは、要求される保護等級を満たす扉シール・止水・放熱構造を板金側で作り込む必要があります。等級と放熱の両立など、具体的な設計論は別記事で詳しく解説しています。
5. 色彩・銘板に関わる規格(JEM 1135/JEM 1172)
5-1. 盤の標準色(JEM 1135)
盤の外装色は、複数メーカーの盤が並んで設置されても調和するよう、JEM 1135で標準色が定められています。代表的な標準色は次の通りです。
| 標準色 | マンセル値(参考) | 日本塗料工業会番号(例) | 備考 |
| ライトベージュ | 5Y7/1 | P25-70B | 高圧分野を含め広く普及した標準色 |
| クリーム | 2.5Y9/1 | P22-90B | 白基調の空間で使われることが多い |
光沢と標準色見本:ツヤは半ツヤ(5分ツヤ)が一般的です。マンセル値だけで塗装すると、隣り合う盤で微妙に色が異なることがあるため、JEMAは基準となる標準色見本(JEM-TR 111)を発行しています。厳密な色合わせが必要な列盤では、この見本での確認が推奨されます。屋内はクリーム、屋外はライトベージュと使い分ける例もあります。
5-2. 銘板(JEM 1172)
盤の名称・製造者・定格などを表示する銘板は、JEM 1172で寸法・材質・取付方法が標準化されています。銘板は盤の識別・保守・トレーサビリティに関わるため、板金の取付穴位置とあわせて設計段階で計画しておく必要があります。
6. 接地・相色・耐震に関わる規格
接地(JEM 1323ほか):盤の接地は感電防止・機器保護の要であり、接地端子の設置やボンディング(等電位化)が規定されます。板金側では、塗装面での導通確保(マスキングやアース用座金)まで配慮が必要です。
相・極性の配置と色別(JEM 1134):交流の相や直流の極性に応じた器具・導体の配置と色分けが定められ、誤配線・誤操作の防止に寄与します。
耐震設計(JEM-TR 144ほか):地震時の移動・転倒を防ぐため、盤の固定方法や架台・アンカーの設計が問われます。特に自立形の大型盤や重要設備では、水平・垂直方向の地震力を考慮した固定設計が求められます。
板金製作との関わり:接地端子の取付座、アース導通のための塗装マスキング、耐震固定のためのベース・架台の剛性設計は、いずれも板金・構造設計の領域です。規格要求を満たす金物・穴加工・補強を、盤本体と一体で設計することが重要です。
7. 海外向けの規格(UL508A・NFPA79・IEC/CE)
UL508A:北米向けの産業用制御盤の安全規格。内部配線の温度定格や電線種別(MTW・AWM等)、主回路・制御回路の電線サイズ(14AWGを基準とした規定)、短絡電流定格(SCCR)などが細かく定められています。UL認証品と、試験を受けていない「UL準拠品」は区別されます。
NFPA79:産業機械の電気規格。機械に付属する制御盤・配線に適用され、UL508Aと併せて参照されます。
IEC / EN・CEマーキング:欧州向けでは、IEC/EN規格に基づく適合(保護等級IEC 60529、機械指令・低電圧指令・EMC指令など)が求められ、CEマーキングの要件となります。
| 輸出案件の注意点:仕向地によって要求規格(UL/NFPA/IEC/NEMA)が異なり、電線・端子・保護等級・銘板表記まで変わります。板金側でも、規格に適合する部材の取付スペースや貫通部の仕様に影響するため、早期の要件確認が手戻り防止につながります。 |
8. 当社の製作実績
各種規格・仕様に沿った盤について、当社が設計から溶接・塗装・組立まで一貫対応した実績をご紹介します。
① 変電所設備 高圧盤(屋外・耐候仕様)

屋外の変電所設備向け高圧盤です。屋根を斜めに設計して排水性を確保し、耐候性の高い塗装を施しています。トランスなど重量物を支えるアングル材フレーム構造や、通気と防塵を両立させる狭ピッチルーバーを自社で設計・製作しました。構造・寸法・保護構造・耐候・接地といった規格要求を、板金構造として具体化した事例です。
② 消雪設備 ステンレス制御盤(屋外・防水仕様)

屋外の消雪設備向け大型盤です。扉まわりの折り返し構造と内扉付き二重構造で防水性を確保し、大型盤特有の歪みに対しては内部補強とコーキング処理で対応しました。保護構造・防水に関わる規格要求を、板金の作り込みで満たした事例です。
| このほかにも、各種仕様・規格に沿った盤の製作実績が多数ございます。製作事例一覧、および保有設備一覧もあわせてご覧ください。(各内部リンクを設定) |
9. 規格を指定して製作を依頼する際のポイント
9-1. 見積・相談時に伝えるべき情報
- 準拠すべき規格・仕様書(JEM番号、UL/CE、発注元の標準仕様書など)
- 設置環境と要求保護等級(屋内/屋外/洗浄など)
- 構造区分・外形寸法・鋼板厚さの指定(未定なら使用条件)
- 塗装色(JEM標準色か指定色か。マンセル値/塗料番号)
- 銘板・相色・接地の仕様
- 耐震要求(固定方法・地震力の条件)
- 海外規格・輸出の有無
- 数量・希望納期
9-2. 設計から一貫対応できる会社に依頼するメリット
制御盤の規格は、構造・寸法・板厚・保護等級・色彩・銘板・接地・耐震と多岐にわたり、その多くが板金・構造設計と密接に関わります。設計と製作が分断されていると、規格解釈のズレや、後工程での手戻りが生じがちです。
盤の詳細設計から板金製作・塗装・組立までを一貫対応できる会社に依頼すれば、要求規格を前提とした構造・仕上げを設計段階から作り込め、規格適合とコスト・納期を同時に最適化できます。規格指定が厳しい官公庁案件や、海外規格が絡む案件、短納期案件ほど、この一貫対応の価値が大きくなります。
| 各種規格・仕様に沿った盤を、設計から製作まで一貫対応。官公庁仕様・屋外・短納期のご相談も歓迎します。 |
10. まとめ
制御盤の規格は、法規から国内工業規格(JIS・JEM・JEC)、海外規格(UL・IEC・NEMA)まで幅広く、そのうち“盤という箱そのもの”を規定するのは主にJEM規格群です。板金製作の観点では、次の順で押さえるのが実務的です。
- 準拠すべき規格・仕様書を確定する(発注元指定を含む)
- 構造・寸法・板厚(JEM 1459)を設計に落とし込む
- 設置環境から保護等級(JIS C 0920/JEM 1267)を決める
- 色彩(JEM 1135)・銘板(JEM 1172)・接地・相色・耐震を仕様化する
- 海外規格の要否を確認し、必要なら早期に要件を固める
当社では、制御盤・電装ボックスの詳細設計から板金製作・塗装・組立まで一貫して対応しております。JEM標準色や各種仕様書に沿った盤の設計・製作はもちろん、屋外・特殊環境・海外規格・短納期のご相談も承ります。図面や仕様が未確定の段階からのご相談も歓迎いたします。